びっくりレポート

 タカコ・グレッグが日本を離れてから、日々のできごとや見たこと聞いたことを、みんなにレポートします。お楽しみに!


びっくりレポート012号

11月1日(日曜日)晴れ時々曇り 26度

 ある日学校から戻ると、「さっきブタを殺して、今ごろ海岸で肉を切っているよ」と言われ、ナイフを片手に大急ぎで飛んでいきました。

 2歳の大きなブタ。いつも海のお風呂に行く場所の、ちょっと向こうのヤシ林の中にいたブタだそうです。6人くらいで円になって、ブタの肉や内蔵を切り分けていました。

 聞けば、お隣りのセレスティン青年が23歳の誕生日で、今日はお祝いパーティだそうです。

 脂分は3センチくらいの四角に切って、大きな鉄鍋で煮て、油をとりだします。

 海岸近くのヤシ林の中で、あっというまに調理場ができていました。燃料はヤシの実の乾燥した外皮とヤシの乾燥した葉などです。

 脂分を入れて火にかかっていた鍋は、もう一つありました。脂を取りだした後、小さくなったブタの脂肪片の中に、小さく切った内臓と肉を少し入れて、フランシスコさんのむすこで19歳のサムが、ヤシの葉の太いクキでかきまわし始めました。

 じゅーじゅー音がしています。しばらくしてまた誰かが、ヤシの葉を下にいれて火を強くしました。近くでは、別の人が真っ赤なとうがらしを小さく切っています。レモンの葉っぱを真ん中で結わえている人もいます。

 「もうそろそろかな」。サムが言いました。サムは熱を受けて、あせびっしょりです。

 すると母屋の方に置いてあった入れ物を持ってきた青年が、バナナの葉っぱのふたを取って、中身を鍋の中に注ぎ込みました。それは真っ赤なブタの血でした。

 3リットルもあったでしょうか、人工的に思えるほど、浮き上がった赤でした。

 すぐにレモンの葉ととうがらしが投げ入れられ、サムはかき回し続けます。

 この料理はウォレアイ語で「チャ」と言います。「血」という意味です。主にブタの内臓を血で煮込むのです。

 鍋から煙がたっていたのでにおいをかいでみると、ちょっぴり酸っぱいレモンの香りと野生のくさみが混ざっていました。

 血を入れてからは、もう10分もしないでできあがり。すぐに味見をさせてくれました。とってもおいしい!血の感じはまったくしませんでした。きっとものすごく栄養があるんだろうなあ。

 パーティでは、女性たちが作ったきれいなレイを頭や首からに飾って、セレスティンがうろうろしている中、まず「ハッピーバースディ」の歌。これは英語でした。ウォレアイ語では、「誕生日おめでとう」という言葉はないそうです。

 そしてメインディッシュは、「チャ」。他にも豚肉を煮込んだものや、数種類のタロ、米、そして珍しいヤシガニまで出てきました。(ヤシガニは、昔はうじゃうじゃいたそうですが、取り過ぎが原因で、今はほとんどいません。)

 家の前の、砕けたサンゴがしきつめられた敷地に、隣近所25名くらいがめいめいに座り、大きな葉っぱのお皿やプラスチックのお皿にごちそうを取って、あっというまにパーティは終わりました。この大ご馳走はもちろん、ヤシの葉で編んだバスケットに入れられて、親戚や他の人たちにも分けられていきました。(高野孝子)



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